活動レポート | 2015年08月31日 | 6,276 views | Posted by harnya
はーにゃです
大変遅くなりましたが、練馬区教育委員会委託子育て学習講座の第2回目のご報告です。
8月8日(土)にレインボースターズCNさんの企画でスマタブのワークショップを開催させていただきました。
「スマホやタブレットを使って生活支援」というと、
学習とは違うの?
療育ではないの?
娯楽や余暇は?
というご質問を受けることが多いです。
今回はその部分についてご理解いただくために
2つほど疑似体験をしていただきました。
それもよくある
「自閉症や発達障害を体験してみましょう」
ではなく
「あなたのままで、彼らがおかれやすい状態を疑似体験」
です。
【指示待ち体験】
まずは
「指示待ち体験」
まわりを見て動けているからお子さんは大丈夫ですよ。。。
それ本当ですか?
まわりを見ないと自分から動けない、指示してもらえないと行動できない
そんな「指示待ち」状態の体験をしていただきました。
内容は以下の通りです。
まず司会の私からお話しをします
私:「それでは皆さん、これから資料をお配りしますので『ゆうとママ』のところに行って資料をもらってください」
(みなさんウロウロ・・・)
「皆さんどうしたんですか?はい、移動してください。もう一回言いますよ『ゆうとママ』ですよ」
そうです。
参加者のみなさんはどの人が『ゆうとママ』か知らないわけです。
『ゆうとママ』という言葉は聞こえています。
でも動けません。知りませんから。
中には
「ゆうとママさ~~ん」
と呼びかけている方もいます。
受付のスタッフに
「ゆうとママですか?」と聞いて
「違います!」と言われている方もいます。
どうしよう、、、とみなさん不安げです。
私は視線のヒントも出しません。
そこから20秒くらいして、ひとりの方が動き始めました。
何やら自信ありげです(笑)
そしてその方がひとりの女性の前に立ち
「資料ください」
と言い、資料を受け取っています。
その方が無事資料をもらったのを確認した他の参加者の方は誰が『ゆうとママ』なのかに気づき、その方に続きます。
そして皆さんがもらい終わったとき、私から次の指令が。
私:「はい、みなさん無事もらえましたね。では次に『ひーさん』のところに次の資料をもらいに行ってください」
皆さんの顔が「ええええ?」になります。
そりゃそうですね。また誰が『ひーさん』なのか分かりませんから。
皆さんウロウロ。
私:「はい、みなさん動いてください。もう一回言いますよ『ひーさん』からもらってください」
何回言われても分からないものは分かりません。。。
不安になってきた参加者のみなさん。。。
そしてしばらくしたら先ほどの方がまた動き始めました。
みんなの視線がその方に注がれます。
そして前回同様、ある方の前に立って資料をもらったその方。
皆さんすぐにそれに続きます。
そしてまた私からの指令が飛びます。
私:「はい、みなさんもらえましたね。では次に『ひっきーさん』からもらってください」
皆さん:・・・・・・
もうこの時点でさきほどの方が知っているに違いないとその方の動きを追うみなさん。
・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
しばらくしても彼女は動きません
・・・・・・・
・・・・・・・・・・
じりじりじり・・・
皆さんが不安になってきた頃、2回目の時に資料を配ってくれた『ひーさん』が動き出しました。
ひーさんが向かったのは何と2回目まで動いてくれた(みんなが動きを追っていた)彼女の前。
そう彼女が3回目の資料配布担当『ひっきーさん』なのでした。
はい、終了~~~。
読んでるだけで疲れませんか?バーチャル指示待ち体験いかがでしたでしょうか?
【情報格差体験】
続いて「情報格差体験」です
意思決定は大切
でもその決定をする上で情報がまったく足りていなかったら?
それでもあなたは選べますか?
私が直接みなさんに資料をお配りします。
資料にはたくさんのタバコの写真が。
まぁ身近なものですが、タバコを吸わない方は名前も知らないものも多いでしょう。
2枚目の資料にはメモ欄もあります。
そして同じ写真一覧がスクリーンに大きく映し出されます。
ここで私から質問が出されます。
私:「これから私が言う3つのタバコを前に出て指さしてください
「資料にメモ書きしていただいても構いません。もちろん前に出る時にその資料をお持ちになってもいいです」
「分からなくなったら私に『もう一度言ってください』と伝えてください」
とお話しします。
準備はいいですか?言いますよ~。
『ラッキーストライクFK』、
『キャスター』、
『ラーククラシックマイルド』
皆さん目をこらして懸命に資料から3つのタバコを探しています。
私:「はい、ではそこの方、お願いします」と会場からおひとりに前に出てもらって指さしてもらいます。
無事指さしてくださいました。
そして次の方にはまた別のタバコ名で同じ質問をします。
皆さん必死です。
私の言葉を聞き、時には
「もう一度言ってください」
と聞き返しながら懸命に回答(指さし)してくださいました。
「もう一度言ってください」
と聞き返しながら懸命に回答(指さし)してくださいました。
とても苦労されてる方もいらっしゃれば、何だかあっさりとクリアされる方もいらっしゃいました。
あっさりクリアされる方はタバコにお詳しい方だったのかな?
問題が簡単だったかな?
「おおお。すごい」と小さな拍手が起こることも。。。
そして5問を5人の方に回答していただいて、第6問。
私:「では、そちらの方に質問します」
「4と10と18を指さしてください」
指名された方が前に出て
「ええっと、4 、、、そして10、、、、18、、、」と指さしていきます。
その時、会場が少しざわめきます。それもなぜか左側の方達だけ。
「え?4???10??」
右側に座っている方達は平然とされています。
私:「はい、正解です。ありがとうございました」
「これで疑似体験は終わりです。ではこの席の真ん中から右の方と左の方で資料を交換してみてください」
皆さん???と思いながら反対側の方と資料を交換します
「ええええ!!!!!」
と声があがります。
ここでタネあかし。。
この疑似体験は何も皆さんの記憶力とか聞き取る能力とか、目的の物を素早く探し出す能力を試すものではなかったのです。
お配りした資料、、思いっきりえこひいきさせていただきました。
左側の方には
タバコの写真の一覧のみ
2枚めにはメモ欄があるだけです
右側の方には
タバコの写真にもすべて番号が振られています
2枚めには何と質問があらかじめ書かれています。
そして写真の番号と連動したタバコ名も一覧になっています
右側の方の資料1枚め
右側の方の資料2枚め
思わず「ずる~~~い」「ええええ!!!」の声。
そうです。
何食わぬ顔で私が配った資料、右と左でかなりの情報格差があったのです。
「そっか、彼らにとってはこのくらいの情報格差、本当に当たり前にあることだね。
こんな中で生活してるんだ」
との声が聞こえてきました。
指示待ちは決して本人の幸せにつながらない
そのためにも情報格差を埋める支援を考えなければならない
そのツールとしてICTは大きな力があります。
とお話しさせていただきました。
以上で疑似体験は終了です。
その後のワークショップでは特別なアプリはほとんど使わず、カメラにしぼってワークショップ。
口を閉じて写真や筆談でコミュニケーションを取るという体験をしていただいたり、時間を心待ちにできるタイマーの使い方の例を悪い例のご紹介もしながら、みなさんで考えていただいたりしました。
この日は数人の当事者の方にもご参加いただいたのですが、
「ここまで本気で当事者目線で支援を考えている人に出会ったことがなかった」
との感想をいただき大変うれしく思いました。
ご参加くださった皆さん、企画してくださったレインボースターズCNのみなさん、練馬区教育委員会さん、ありがとうございました。