なぜ・どのようにiPadを使った授業がおこなわれるのか。広尾学園の公開授業に参加してみて(後編)

0

スマホ活用術/アプリ紹介 | 2012年12月28日 | 14,466 views | Posted by vochkun

 こちらの記事の続きです。

 「広尾学園×iPad×ICT教育」カンファレンス2012の午後のプログラムは、広尾学園の先生らによる実践報告と、生徒らも交えた公開ディスカッションがおこなわれました。

iPadの運用方法について

 実践報告の中で聞いたiPadの導入と運用方法についてまとめてみます。

  • iPad本体の購入→ 生徒の家庭にて購入
  • 有料アプリの購入→ 学校側で用意(生徒は勝手にアプリを入れられない)
  • 無線LANの利用→ 生徒専用の無線LANに接続可
  • 電源・保管場所→ 充電可能な鍵付きのロッカーを用意

 以前、紹介した袖ケ浦高校の例と比較すると、生徒が勝手にアプリをインストールできない点(学校側でiPadの機能制限+パスコードを設定)で大きく異なりますね。

 また、広尾学園においても、やはり電源の確保とセットアップの手間は運用上のネックになっており、これまで色々と苦労されているとのことでしたが、最近になって強力な新兵器が導入されたようです。

 これ1台で最大48台のiPadを同時に充電・同期できるラック型カートです。これは凄いですね。製品紹介ページはこちら↓

 また、セットアップの問題については、Apple社が提供するモバイルデバイス管理ツール(MDM)「Apple Configurator」の導入を検討中とのこと。「Volume Purchase Program:VPP」(アプリの一括購入制度)が、2012年9月より日本でも利用可能になったため、Apple ConfiguratorとVPPの組み合わせは、今後、日本の教育現場に広がっていくのではないかと期待しています。

なぜ教育のICT化を進めるのか

 広尾学園の大橋学園長は、基調講演の中で「20世紀の授業は、教科書に載っている『既知のこと』をひたすら教え込む授業だったが、21世紀型の授業では『未知のこと』について自分自身で考え、創出し、解決する能力を養うものであるべき」と語っていました。

 そのためには、いかに子ども達の知的好奇心を刺激し、学びに対する内発的動機付けを向上させるかが重要であり、iPadはそれを実現するための「学びの武器」と位置付けているとのこと。実際にICT化を進めてから、生徒の成績は目に見えて向上したそうです。

ICT教育の導入について

 「我々にはICT教育のノウハウはまったくなかったが、ゼロから出発するのは大きな強みだった」と語ってくれたのは広尾学園の情報化担当の金子教諭。「やるやらない」の議論をするのではなく「どうやるか」をひたすら考えたとのこと。スモールステップでもいいので、まずは一歩踏み出すことで大きく世界が広がったとも語っていました。

 また、デジタル化を進めれば進めるほど、その正反対であるアナログの大切さにも自然と目が向くようになったとも言っていました。広尾学園では、最先端のテクノロジーを使った授業をおこなう一方で、対面でのコミュニケーションや人間の感性を重視した教育活動も数多くおこなっているそうです。

 その他、実践報告では、医進・サイエンスコースの研究活動への取り組みやインターナショナルクラスのMoodleKhan Academyを使った事例などが紹介されました。

  また、大阪大学の岩居弘樹先生による講演「語学教育におけるICT教育」では、大学のドイツ語の授業におけるiPadの活用方法がされ、とても興味深い内容でした。いずれ機会があれば番外編としてまとめたいと思っています。

サプライズゲストにスーパー中学生も登場

 公開ディスカッションの冒頭に、千葉県立千葉中学校に通う山本恭輔君からのビデオレターが紹介されました。山本君は、これまでTEDxOsakaへ出演するなど、いま大きな注目を集めているスーパー中学生です。約10分間のビデオレターでは、生徒の立場からICT教育の必要性について熱く語ってくれていました。

 なお、山本君がiPadの教育的利用について独自に調査し、電子書籍にまとめたものが「教育現場iPad活用ガイド」として自身のWebサイトで公開されています。iBooks形式となっていますので、iPadをお持ちの方は是非ダウンロードして読んでみてください。

 初めてこのTED動画を観たときはビックリしました。素晴らしいです。

中高生によるプレゼンも

 公開ディスカッションでは、広尾学園の生徒を代表して3人の中高生が、学校での活動について発表してくれました。授業だけでなく、クラブ活動など様々なシーンでiPadを活用している様子がよく分かりました。

 なにより、160人以上の観衆を前に、物怖じせず堂々とプレゼンする姿には驚かされました。これも日頃の成果の一つなんでしょうね。

 なお、広尾学園が生徒に配布しているガイドライン・ドキュメントが下記のページにて公開されています。学校内でiPadを使用する際の注意点が分かりやすく書かれていますので、iPadの導入を検討している学校関係者にとって、大いに参考になるのではないかと思います。

この記事を書いた人:
Naoya Sangu @vochkun プロフィール詳細

あわせて読みたい関連記事