学校で使う学習者向けタブレット端末は誰が買うの?(千葉県立袖ケ浦高校のiPad活用事例)

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スマホ活用術/アプリ紹介 | 2012年12月03日 | 15,083 views | Posted by vochkun

 今年の『日本 e-Learning大賞』には、千葉県立袖ケ浦高等学校の『一人一台タブレットを利用した協働・共有型学習』が選ばれました。

 同校の情報コミュニケーション科では、全生徒が一人1台のiPad 2を持って授業に参加するという取り組みを2011年4月よりおこなっています。

 先日開催された『e-Learning Awards 2012 フォーラム』の講演会にて、同校の学科主任、永野直さんのお話を聞くことができました。学校内でタブレット端末を利用する際のノウハウが満載で、大変勉強になりました。

 運用に関するポイントを簡単にまとめると、

  • iPad本体の購入→ 生徒の家庭にて購入
  • 有料アプリの購入→ 生徒の家庭にて購入
  • 無線LANの利用→ 校内の無線LANに自由に接続可
  • 電源の確保→ 家庭で充電してくる(校内では原則充電禁止)
  • 校内での保管→ 学校側で鍵付きのロッカーを用意

 という感じでした。

iPadが生徒の私物である理由は?

 まず驚いたのが「iPadは全て生徒の私物である」ということです。いわゆる『BYOD(Bring Your Own Device/私的デバイス活用)』ですね。

 これについて永野さんは「他人のケータイを使いたいと思う人はいない。それと同様にiPadも生徒個人の所有物である方が愛着が湧くし、徹底的に使い倒そうという気持ちになる」と言っていました。

 なるほど、学校側の予算の都合もあるのかもしれませんが、たしかに個人で所有するメリットは色々ありそうですね。例えば、学校が終わったら家に持って帰って、家庭での予習・復習にiPadを活用する、なんてこともできそうです。

 でも、自己負担でiPadを購入することに反対する保護者はいなかったのでしょうか?

 これについては「入学願書にも明記しており、みなさん納得の上で入学されるので疑問の声はまったくなかった」とのこと。ちょっと高価な文房具の一つといった感じでしょうか。普通科ではなく情報コミュニケーション科というのもポイントですね。

 逆に言うと、高校だからできることであって、公立の小中学校では同じ方式とるのは難しいと言えるかもしれません。ただ、最近の子どもたちは数万円する電子辞書、携帯ゲーム機、スマホなどを所有している事が多く、金額的ににはiPadそれほど変わらない、との意見も。「どうせ子どもに買い与えるならiPadを」という考えは案外アリなのかもしれませんね。

 なお、iPadのモデル指定については「入学の時点で最新のモデル」とのこと。ということは、来年入学する新入生は、iPad Retinaディスプレイモデルになるのかな? うーん、羨ましい!

 ちなみに、iPad miniについては、「人に見せたりするのに画面が小さすぎるからNG」とのことでした。

アプリについて

 授業で使用するアプリについては、極力無料のものを活用するようにしているとのこと。ただし、下記の有料アプリだけは、学校で指定して、各家庭にて購入してもらっているようです(いずれもApple社製のアプリ)

  • Pages(ワープロ) 850円
  • Numbers(表計算)850円
  • Keynote(プレゼンツール)850円
  • iMovie(動画制作)450円

 ちなみに、授業で使うファイルの受け渡しには Dropbox が使われていました。

無線LANについて

 校内のあらゆる箇所に無線LANの設備があり、生徒所有のiPadを自由に接続することできます。このLANは、校務で使用するネットワークとは完全に切り離されており、個人情報の保護もちゃんと配慮されているようです。

(12/20補足追記)無線LANに接続可能なのは、あくまで学習用のiPadだけで、生徒が個人所有するスマホやゲーム機等の接続はもちろんNGです。また、有害コンテンツのフィルタリングサービスを導入するなど、安全面での配慮もおこなわれているようです。

充電について

 学校でタブレット端末を利用する際に、意外に盲点となるのが「電源」の問題です(下記の記事参照)

 教室内に生徒分のコンセントを設置するには設備投資が必要ですし、タブレットの充電には時間がかかります。

 千葉県立袖ケ浦高校では、シンプルな解決策として「各家庭で充電してくる」を基本ルールとしています。たしかに朝フル充電しておけば、1日くらい余裕で持ちますからね。そう、iPadならね!(笑)

 個人所有だからこそできる逆転の発想と言えますね。

保管について

 盗難防止のため、学校側では鍵付きのロッカーを用意しているとのこと。あとは、生徒個人が責任をもって管理するのがルールのようです。

生徒自身がルールを決める

 上記のルールの多くは、生徒同士が話しあって決めたものだそうです。

 ルールの中には「授業中にはゲームをしない」もあるのだとか。まぁ、これは当たり前かもしれませんが、「では、学校内でゲームをするのは、やはり禁止なんですね?」と永野さんに質問したところ、

 「いえ、休み時間にはゲームで遊んでますよ(笑)。遊ぶときは遊ぶ、勉強するときは勉強する。生徒自身が節度を持って使ってくれているので、なんの問題もありません」と意外な回答が帰ってきました。

 いやー、すごいですね。自分たちで決めたルールだからこそ、自分たちで責任を持って守るということなのでしょうね。

 千葉県立袖ケ浦高校のiPadを使った学習モデルは、学校でタブレット端末を活用する際のロールモデルとして今後もさらに注目を集めることは間違いなしですね。


 ということで、運用面を中心にまとめてみました。講演ではTwitterを活用した授業の話もあり、とても興味深かったのですが、ここでは割愛します。関心のある方は下記の記事をご覧ください。

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