活動レポート | 2011年10月21日 | 15,124 views | Posted by vochkun
こちらの記事の続きです。
「障害のある方へのIT支援者要請講座」の午後のプログラムは、滋慶医療科学大学院大学の岡耕平さんによる講座「知的・発達障害のある方の困り感に応じたIT支援」がおこなわれました。
困り感に応じた支援とは
岡さんによると、これまでの障害観は、「◯◯ができる人」→健常者、「◯◯ができない人」→障害者という風に、健常者と障害者の境目がハッキリしていたが、これからは「困難が少ない人」「困難が多い人」というように困難の程度(困り感)を軸に支援がおこなっていくべき、とのこと。
例えば、みなさんは次のような経験はありませんでしょうか?
1) コンタクトを落として目が見えない
2) 騒音で電話の声がよく聞こえない
3) 風邪で頭がボーっとして考えがまとまらない
4) 外国で人の話が理解出来ない・話したくても話せない
上記の4つは程度の差こそあれ、1) 視覚障害者、2) 聴覚障害者、3) 知的障害者、4) 発達障害者の方々が日常的に経験している「困り感」です。つまり法令上や医学上の定義とは関係なく、「困り感」は誰しもが持ってる共通のものということです。
特に知的・発達障害の場合は、困り感の個人差が大きく、「こう対処すればOK」的な杓子定規な支援はほとんど意味がありません。
逆に言うと、「もし自分が同じ状況だったらどうするか?」を考えれば支援の道が開けると岡さんは言っていました。なるほどー!という感じですね。
テクノロジーを活用した適切な支援(合理的配慮)とは
次に岡さんが解説してくれたのは、テクノロジーを活用することの意味についてです。
みなさんは、自分の家族のケータイに電話をかけることができますか? と聞かれたら、多くの人が「できる」と答えると思います。実際のところ、家族全員のケータイ番号を頭で記憶している人は稀なので、ケータイの電話帳機能を使って電話をかけると思いますが、このとき「家族に電話をかける能力=自分生身の能力+外部の力(ケータイの電話帳機能)」という図式が成り立ちます。
その一方で、障害をもつ人に対しては、純粋に生身の能力だけを見て「できる・できない」を判断していませんか? どうにもならない困難を抱えている人に、ひたすら「がんばれ!がんばれ!」と本人の努力のみを要求するのはフェアではない、と岡さんは言っています。
IT支援者の仕事も、パソコンやケータイなどのテクノロジーを「どうやって使うか」から、今後は「使ってどうするか・どう活用していくか」にシフトしていくだろう、とも言っていました。
IT支援の最終的な目標は「テクノロジーを活用することで活動の範囲を広げ、その中で得意な事や好きな事を発見し、楽しく充実した生活をおくってもらうこと」と岡さんは語っていました。とても素晴らしい考えだと思いました。
知的・発達障害者向けiPhone/iPadアプリ紹介
セッション後半のワークショップでは、実際にiPadを使いながら、皆でIT支援ついて考える時間となりました。
そこで取り上げられていたアプリの一部をご紹介します。
SoundNote (¥500)
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テキストメモをとりながら同時に音声メモもとれるメモ帳アプリです。自分なりのキーワードと音声を結びつけて記録できるので、大事なことを忘れないようにするときに便利。
フュージョン計算機 (¥200)
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Fusion Calculator for iPad (¥400)
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計算機アプリですが、計算結果を画面上に自由に保存しておくことができます。計算結果をドラッグ&ドロップで再計算に利用したりとユニークな機能が付いています。
ドロップトーク (¥1,300)
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コミュニケーションエイドです。非常に多くの語彙が網羅されているのが特徴です。絵も日本の文化に合っているので違和感なく使えます。
Voice4u JP 会話支援アプリ (¥5,800)
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こちらもコミュニケーションエイドですが、グラフィックや音声が発達障害者にとって理解しやすいものになっているのが特徴です。
ねぇ、きいて。 (¥300)
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こちらもコミュニケーションエイドですが、「たべたい」→「おにぎり」=「おにぎりたべたい」という風に要求指向で言葉を組み合わせられるのが大きな特徴です。
Lotus (¥100)
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タイムエイドともよばれる時間管理アプリです。TIME TIMER的な使い方をします。タイマー中は子どもが勝手にいじれないように終了ボタンが消えるなどの工夫があります。
その他の支援アプリについては、岡さんの個人ブログの下記のページに網羅されていますので、興味のある方は参照してみてください。
- 特別支援教育に役立ちそうなiPhone/iPadアプリ一覧 – okakohei.com