活動レポート | 2012年01月23日 | 15,247 views | Posted by vochkun
1月21日に東京大学先端科学技術研究センターにて開催された「魔法のふでばこプロジェクト成果報告会 〜 タブレットPCを用いた未来の特別支援教育を考える」に参加してきました。
「魔法のふでばこプロジェクト」とは、iPadを活用して障害がある子どもの学習支援をおこなうことを目的に、東大先端研とソフトバンクグループが開始した協同プロジェクトで、これまでに全国の特別支援学校34校にiPadの無償貸し出しをおこない、教育現場での活用事例を研究してきたものです。
中邑教授「教育のイノベーションで新しい社会を創る」
報告会の冒頭、東大先端研の中邑賢龍教授による基調講演がおこなわれ、これからの特別支援教育と支援技術の在り方について語られました。
その中で中邑教授は「支援技術(Assistive Technology)を使うことで、障害のある子どもたちが積極的に社会参加する未来がくる。そいういった人たちといっしょに新しい社会をデザインすることで、素晴らしい世の中になる」と語っていたのが印象的でした。
iPad活用事例は新しいアイデアの宝庫
続いて全国の協力校よりiPadの活用事例についての報告がおこなわれました。このセッションでは「病弱・感覚器障害(視覚障害・聴覚障害など)」「発達・知的障害」「肢体不自由」の3つのカテゴリに分かれて、各学校の担当者より約15分間の発表がおこなわれました。
どの学校の発表でも授業の中でiPadを活用するためのアイデアと工夫が素晴らしく、iPadにこんな使い方があったのか!と関心させられました。
例えばある学校の発表では、ハンディキャップのある子どもたちがiPadを片手に教室を飛び出して、地域社会の中で様々なフィールドワークをおこなっている事例が紹介されました。先生曰く「iPadを使えば、どんな場所でもプロジェクター付きの教室になる」とのこと。どこへでも簡単に持ち運べるiPadのメリットを活かした活用方法だと思いました。
また、各校の発表の中で多くの先生が異口同音に語っていたのが「iPadは支援ツールとして活用範囲がすごく広い。ただ、それを活かすも殺すも先生次第。工夫とアイデアが大切」という言葉。まさにそのとおりだと思います。
支援アプリの紹介
各校の発表の中では支援に使えるiPadアプリがたくさん取り上げられていました。その中から私が特に気になったアプリをいくつかご紹介したいと思います。
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画面をタッチするとキレイな花火が飛び出します。肢体不自由な子どもの訓練や発達に遅れがある子どもの強化子(学習のモチベーションを上げるための一種のご褒美)として使われていました。
モジルート (無料)
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ナゾルート (無料)
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ひらがなやカタカナの書き順を楽しく学習できる知育アプリで、うちの子も大好きなアプリの一つです。このアプリは本当に多くの学校で活用されていました。
おえかキロク (¥200)
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本来はお絵描きアプリですが、描画過程を記録・再生する機能があるので、文字の書き順をチェックするために使われていました。
ドロップトーク (¥1,300)
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有名なコミュニケーションエイド(VOCA)の一つ。VOCAは色々な種類のアプリがリリースされていますが、DropTalkは非常にたくさんの種類のカードが入っているのが特徴です。可愛い絵も子どもたちに人気です。
Keynote (¥1000)
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Apple純正のプレゼンツールですが、これを使って学習教材を自作する例が数多く紹介されていました。タップした位置によってアクションを変えることができるので、インタラクティブな教材を作ることができます。
ちなみに私のアプリもちょこっとだけ発表スライドに登場しました。これはにはビックリしましたが、今後は学校の授業でもっと活用できるようなアプリを作っていきたいと気持ちを新たにした瞬間でした。
他にも様々なアプリが紹介されていました。下記のブログは今回の報告会に島根県から参加された先生のブログですが、「教育アプリおたく」を自認する私も思わずビックリするくらい数多くのアプリを実際に試用され、その評価をブログにアップされていますので、興味のある方は是非参照してみてください。
魔法のプロジェクトの今後について
「魔法のふでばこプロジェクト」は今年の3月で一旦終了となりますが、来年度からは新たに「魔法のじゅうたんプロジェクト」がスタートします。
今回からは、特別支援学校・学級に加えて職業訓練校も対象となるようです。懇親会の場で、ソフトバンクの担当者にお話を聞いたところ、昨年は全国170校から応募があり、今回もかなりの倍率が予想されるとのこと。また「なんとなくiPadを使ってみたい」ではなく「こんなテーマで活用研究をしたい!」という具体性が求められているとのことです。
応募締切が2月3日ということで、あまり時間の余裕がありませんが、対象校の学校関係者の方は検討されてみてはいかがでしょうか。
今後の課題について
今回の発表会では、ICT教育への取り組みについて、自治体ごとに大きな隔たりがあることが浮き彫りになりました。
例えば、東京都では昨年末からようやく公費でiPadが買うことが認められるようになったものの、3GおよびWiFiともに無線での使用は禁止されているとのこと。セキュリティを配慮してのことだと思いますが、ネットワークに接続できなければiPadのメリットが半減してしまいますね。。。
一方、大分県などいくつかの県では、iPadなどの情報端末の導入に非常に積極的で、WiFi接続がOKなのはもちろんのこと、iPad専門の支援員(!)を配置したり、iPad活用の勉強会を開催するなどして、学校への導入を推進しているようです。
大分県の教育庁の方が「iPadを使って授業をしたい先生はぜひ大分県へ!」と声を大にして呼びかけていました(笑)
さいごに
今回参加した成果報告会では、学校という教育の現場において、子どもたちのためにどうやったらiPadを上手く活用できるか、先生視点での活用アイデアや苦労話などを数多く聞くことができ、とても素晴らしい経験となりました。
また、報告会後の懇親会では、いろんな方から「こんなアプリを作って!」とお願いされてしまいました(笑)。先生方と直接お話する機会が持てたのも大きな収穫でした。
P.S.
iPhone/iPadを使ったIT支援についての私なりの考えを下記の記事にまとめてありますので、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。
この記事を書いた人:
Naoya Sangu @vochkun