教育現場でのiPad活用事例を発表 ― 魔法のじゅうたんプロジェクト成果報告会

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スマホ活用術/アプリ紹介 | 2013年01月29日 | 12,612 views | Posted by vochkun

 1月26日に東京大学先端科学技術研究センターでおこなわれた「魔法のじゅうたんプロジェクト成果報告会」に参加してきました。

 「魔法のじゅうたんプロジェクト」は、全国の特別支援学校などにiPhone/iPad/Android端末を1年間無償で貸し出し、障害がある子どもたちの学習支援・生活支援についての実証研究をおこなうプロジェクトです(ソフトバンクモバイル、EDUAS、東京大学先端科学技術研究センター、e-AT利用促進協会による協同プロジェクト)

全国の学校から実践報告

 本年度の応募総数は、なんと358件もあったとのこと。その中から採択された51組の研究協力校を代表し、8都道府県10校から実践報告がありました。

 本年度の傾向として、端末の貸出が教師用と生徒用の2台セットになった影響で、学校と家庭間の連携に視点を置いた発表が目立ちました。例えば、東京学芸大学附属特別支援学校香川県立高松養護学校が報告していたのが、iPadを「連絡帳」として活用する事例。従来までの紙の連絡帳と比べて「学校内での子どもの様子がよく伝わった」「学校と家庭、また家族内でのコミュニケーションの機会が増えた」などの効果があったようです。

 また、個人的に特に面白いと思ったのが大分県の南石垣支援学校の取り組み。課外授業の中で生徒が持つiPadにクイズ形式の司令が出され、それを生徒たちが自分たちで考えながらクリアしていくというもの。司令の中には「◯◯のお店の人に◯◯について聞いてくる」といった課題もあり、地元の人とのコミュニケーションが自然と図られる仕組みになっていました。

 また、ある先生のお話の中で「iPadを複数の生徒で共有したときよりも、生徒専用のiPadを使わせたときの方が遥かに学習効果が高かった」というのがありました。先日お話を聞いた袖ケ浦高校の先生も同じ意見を言っていたことを思い出しました。

全盲の生徒によるプレゼンが素晴らしかった件

 大阪府立視覚支援学校の発表では、全盲の生徒本人によるプレゼンがおこなわれました。過去の報告会を通してみても、生徒さん自身による発表がおこなわれたのは、おそらく初めてではないかと思われます。しかも、iPhoneの実演デモも交えた素晴らしいプレゼンで、会場にいた誰もが感銘を受けたのではないでしょうか。

 全盲という重い障害を抱えていても、デジタル機器を使えば自立活動の機会を増やすことができる。もちろん学校生活をおくる上で、晴眼者の私には想像もできないような苦労も多いとは思いますが、その前向きな姿勢に、教育現場でのICT機器活用に大きな可能性を感じた瞬間でした。

まとめとちょっとした感想

 ここで紹介した学校以外の実践報告も素晴らしい内容でした。各校の成果をまとめた報告書が春ごろに一般公開される予定とのことなので、期待して待ちましょう。

 ちなみに昨年度の資料はこちらの記事からリンクしています。

 最後に個人的な感想を一言。今回はポスター発表がエントランスホールでおこなわれたのですが、スペースが狭く、自由に見て回るのが困難な状況でした。昨年までは懇親会の会場でポスター展示がおこなわれていたため、軽食をつまみながら、各校の担当者とゆっくりお話ができるのが、とても素晴らしかっただけに、今回はちょっと残念な感じでした。

 運営者のお話によると、会場の都合により急遽こうなったとのことで、仕方ない部分もあったとは思いますが、来年度以降はなるべく元の形式に戻るといいなーと思いました。

じゅうたんの次は魔法のランプ!

 「魔法のじゅうたんプロジェクト」は今年の3月で一旦終了となりますが、来年度からは新たに「魔法のランププロジェクト」がスタートします。

 研究協力校の募集は既に始まっており、採択された学校にはiPhone/iPad/Android端末が1年間無償で貸し出されます。対象校の条件や応募方法については下記のページを参照してください。

おまけ:合宿研修会の情報

 今回のイベントでも発表されていましたが、特別支援学校・学級の教職員を対象とした宿泊研修会が3月に国立特別支援教育総合研究所でおこなわれます。

 そうそうたる講師陣に混じって、僭越ながら私自身も「iPadを使った学習支援・生活支援」をテーマにお話をさせてもらう予定になっています。ま、マジですか。が、がんばります。特別支援学校・学級の教職員でご興味のある方は下記のページよりお申込みください。

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